書斎の漂着本
書斎の漂着本(68)蚤野久蔵 鍵
昭和31年12月に中央公論社から出版された谷崎潤一郎『鍵』の単行本で定価は350円である。「装釘・板畫 棟方志功」とあるだけに函、表紙、見返し、中表紙すべてが凝りに凝った棟方独特の世界で函と本体には手触りを生かす和紙調の...
書斎の漂着本(67)蚤野久蔵 恐るべき空白
「私の好きな探検記ベスト10」などという特集に必ず挙げられるのがオーストラリア縦断遠征隊の悲劇を描いたアラン・ムーアヘッドの『恐るべき空白』である。紹介するのは昭和44年に初の全訳本として早川書房から出版された初版本(尾...
書斎の漂着本(66)蚤野久蔵 官版 輿地誌略
明治7年(1874)7月に出された内田正雄の『官版 輿地誌略(かんぱん・よちしりゃく)』である。新書判と同じ縦17センチだが横は11.8センチとわずかに広い。官版とはいまの官報と同じく官=国による印刷物を指す。輿(=こし...
書斎の漂着本(65)蚤野久蔵 頭にいっぱい太陽を
この連載もようやく後半に差しかかったので少し<毛色>の変わったのを紹介したい。といっても書庫を整理していて偶然見つけたのだから「あることさえ忘れていた」というのが正直なところではある。イヴ・モンタンの『頭にいっぱい太陽を...
書斎の漂着本(64)蚤野久蔵 漫画博物志 日本編・世界編
日本における漫画評論の第一人者だった須山計一(1905-1975)が、ライフワークの集大成として取り組んだ『漫画博物志』は、昭和47年(1972)に東京・番町書房から「世界編」が6月、「日本編」が8月とほぼ同時期に出版さ...
書斎の漂着本(63)蚤野久蔵 アラスカ
太平洋戦争序盤の昭和17年(1942)7月に朝日新聞社の「時局新輯」として発行された『アラスカ』である。大きさはB6版ブックレットサイズ。なじみの薄い輯(=しゅう)は、集めるという意味で、出版社などでは編輯部とか編輯担当...
書斎の漂着本(62) 蚤野久蔵 復刻版・戦前広島市街地図
70年前の昭和20年(1945)8月6日、広島に人類史上初めての原子爆弾が投下された。今年も巡ってきた平和式典のニュースを見ていて数年前に入手した広島の古書店・あき書房が発刊した戦前地図の復刻版があったのを思い出した。...
書斎の漂着本 (61) 蚤野久蔵 ゲバラ日記
昨年=平成26年(2014)12月18日の夕刊各紙は「米・キューバ国交交渉」という大見出しで半世紀以上も敵対関係にあった両国が国交正常化を進めると発表したと伝えた。さすがに高齢のフィデル・カストロ初代国家評議会議長は発表...