書斎の漂着本
書斎の漂着本 (60) 蚤野久蔵 太平洋ひとりぼっち
連載60回目は<区切り>だから入手したことが自身の画期になった一冊にしよう、などと考えていたが「60」は中途半端だし、100回目まで持ち越そうとあらためてムチ?を入れる次第。キリの良かった50回は49回から3回連続で徳川...
書斎の漂着本 (59) 蚤野久蔵 玩具
父の蔵書だった太宰治の自選短編集『玩具』は、終戦1年後の昭和21年8月に東京目白のあづみ書房から発行されている。配給元は終戦後もしぶとく生き永らえていた旧国策会社の日本出版配給統制株式会社である。終戦直後の急激なインフレ...
書斎の漂着本 (58) 蚤野久蔵 海女の島
未来社刊の『海女の島』はフォスコ・マライーニによる舳倉島の取材記で昭和39年(1964)に出版された。表紙のような美人の海女さんがいる島がどこにあるかというと能登半島、輪島市の北50キロの日本海に浮かんでいて「へくら」と...
書斎の漂着本 (57) 蚤野久蔵 酒林雑話
この一風変わった本は数年前に京都市役所近くの古書店の表にある「均一棚」で見つけた。どこが変わっているかというと表紙には『酒林雑話』という題名だけで著者名さえない。表紙絵の「晁」というサインから「ひょっとして三輪晁勢画伯じ...
書斎の漂着本 (56) 蚤野久蔵 女體開顕
本はときに不思議な運命をたどる。初版5,000部のうち、この一冊は「貸本用」に買い取られながら“お役御免”になって古書店に流れ、その後、何人かの所有者を経てわが書斎にやってきた。当時の注目作家のひとりで、貸本にしては目立...
書斎の漂着本 (55) 蚤野久蔵 珊瑚
昨今の中国漁船によるサンゴ密漁問題で、真っ先に思い出した作品がある。新田次郎の海洋小説『珊瑚』である。新田が心筋梗塞により67歳で急逝する1年3カ月前の昭和53年11月に、新潮社から出版された。新田は多忙ななかで舞台とな...
書斎の漂着本 (54) 蚤野久蔵 ほりだしもの
<反戦・抵抗の詩人>といわれた金子光晴の著作のなかではこの『ほりだしもの』がいちばん気に入っている。亡くなった昭和50年(1975)1月に大和書房から出版された。段ボールの外函にもある副題は「めでたき御代のおはなし」で、...
書斎の漂着本 (53) 蚤野久蔵 海の壁
吉村昭の『海の壁』は昭和45年(1970)に224冊目の中公新書として出版された。明治と昭和の2回を合わせて三陸海岸を襲った3度もの大津波の被害を受けた各地を歩き、生存者の記憶を徹底取材して書いた作品で、津波を接近してく...