書斎の漂着本

書斎の漂着本 (52)  蚤野久蔵 実験漂流記  

歴史ライター・蚤野久蔵として原稿を書くようになって早くも3年目に突入した。突入はちょっとオーバーかもしれないが、連日のように「機動隊突入!」などという新聞紙面を経験した世代にはおなじみの表現なのでつい出てしまった。ところ...

書斎の漂着本 (51)   蚤野久蔵 負るも愉し3  

徳川夢声(以下、夢声老)らの「南方行慰問団」の東京出発の日は間もなくやってきた。いったん決まった<無期延期>にはならなかったのである。『負るも愉し』にはできることなら行きたくはない心情があちこちに透けて見えたが、とうとう...

書斎の漂着本 (50)  蚤野久蔵 負るも愉し2 

檜書房の出版第一号となるはずだった徳川夢声の『負るも愉し』は、GHQの検閲にはねられたことで<幻のベストセラー>に終わった。挙句、出版界の<檜舞台に上る>のを意図して命名した出版社そのものもあえなく倒産してしまった。再び...

書斎の漂着本 (49)  蚤野久蔵 負るも愉し1 

活動弁士から漫談家、俳優、作家、はたまた「座談・対談の名手」としてラジオやテレビなど多方面で活躍、わが国における<マルチタレント>のはしりだった徳川夢声の戦中日記『負るも愉し』である。 若い頃から老人めいた雰囲気があり、...

書斎の漂着本 (48)  蚤野久蔵 花傳書  

つい最近、浜大津(滋賀県大津市)の古書店で偶然見つけた戦前版の岩波文庫の一冊である。他より1センチほど背が高かったから戦前のものと判断したが、背表紙が黒ずんでいて題名がほとんど見えなかったのを引っ張り出してようやく世阿弥...

書斎の漂着本 (47)  蚤野久蔵 能登②  

「そうだ、能登へ行こう!」と思い立ったローエルは、東京を出発してようやく6日目に能登を望む荒山峠の頂上に立った。明治22年(1889)5月8日のことだ。 能登の国は、眼前に立つ新緑の若葉をつけた一本の木の枝々の隙間を通し...

書斎の漂着本 (46)  蚤野久蔵 能登①  

久しぶりに能登へ旅しよう!こんどは屏風を立てたような立山連峰をはるかに望む富山湾沿いの雨晴(あまはらし)海岸から、少しばかり遠回りにはなるけれど、むかしは越中と能登の国境だった荒山峠を越えて―― 書棚にあるこの本の背表紙...

書斎の漂着本 (45)  蚤野久蔵 啄木全集 

「石川啄木遺稿」として新潮社から出版された『啄木全集』の一冊(3)書簡・感想である。 大正9年(1920)4月28日発行で、奥付には編輯(集)者として啄木の紹介に尽力した土岐哀果(善麿)の名が見える。ご覧のように相当痛ん...