書斎の漂着本

書斎の漂着本 (36)  蚤野久蔵 饒舌録② 

谷崎潤一郎の随筆集『饒舌録』(東京・改造社)に掲載された『「九月一日」前後のこと』の続きである。関東大震災の前夜、芦ノ湖畔の箱根ホテルに泊まった谷崎は「和室では仕事にならない」と睡眠薬を飲んでようやく眠ったところまで紹介...

書斎の漂着本 (35)  蚤野久蔵 饒舌録① 

東京の大手出版社だった改造社から、昭和4年(1929)に発刊された谷崎潤一郎の随筆集『饒舌録』は、四六判303ページの初版ながらカバーが失われたいわゆる「裸本」である。裏表紙に黒インクのF・Hyodo(兵頭)というサイン...

書斎の漂着本 (34)  蚤野久蔵 帝国大学入學提要  

東京・文信社編輯部編の『帝國大学入學提要』は、【昭和四年度新版】とある通り、この年の9月13日に発行されている。いまどきの受験参考書ジャンルでは「過去問」ということになろうか。大きさは縦19 cm、横10.5 cmで、新...

書斎の漂着本 (33)  蚤野久蔵 踊る地平線② 

谷譲二の『踊る地平線』(中央公論社、昭和4年)の続き。満州・ハルビンの滞在がようやく終わり、いよいよ7日間のシベリヤ横断の旅に出発する直前でアフガニスタンの国王一行と乗り合わせることになったところまで紹介した。 *   ...

書斎の漂着本 (32)  蚤野久蔵 踊る地平線① 

昭和4年(1929)に中央公論社から出版された谷譲二の『踊る地平線』は人気画家で版画家でもあった木村荘八が挿画を担当したことで洒落た体裁の本に仕上がっている。外函にもわざわざ木畫(画)として版画を貼るなどなかなか凝ってい...

書斎の漂着本 (31)  蚤野久蔵 アリューシャン探検 

『アリューシャン探検』(I・W・ハッチスン著、春山行夫訳、昭和17年)は、新潮社の「世界探検紀行叢書」の1冊である。巻末の出版案内には他に『海と密林の旅』(トムリンスン)、『笑ひなき國』(C・カマル)、『アフリカ紀行』(...

書斎の漂着本  (30)  蚤野久蔵 ダモイ・トウキョウ 

京都府の舞鶴市にある舞鶴引揚記念館の収蔵資料がユネスコの世界記憶遺産の国内候補に決定したというニュースを聞いて、わが書庫に終戦直後に発刊されたシベリヤ抑留記『ダモイ・トウキョウ 帰国』(東京・葛城書房)があるのを思い出し...

書斎の漂着本  (29)  蚤野久蔵 京都寶塚ニュース

京都の古書店で見つけた昭和16年(1941)の『京都寶塚劇場ニュース』9月号は、隅の一部は欠け触ると破れそうだった。あと3か月ほどで太平洋戦争が始まるという時期である。値段はたしか300円だったので、ひょっとしたら『蚤の...