“3月26日” 「蚤の目大歴史366日」 蚤野久蔵
*1871年 フランス・パリで民衆が蜂起して革命政府「パリ・コミューン」が生まれた。
1870年7月に始まった普仏戦争でナポレオンがあっけなく敗北したあと、ドイツと講和した臨時政府に対して労働者階級が<ノン>を突き付けた。
そんな簡単なものじゃない!といわれそうなのでもう少し。
ボルドーで開かれた国民議会でパリ国民軍の武装解除命令に反対する市民が選挙と同時に立ちあがり、世界初の「労働者階級の自治による72日間の民主政府」が誕生した。やがてドイツの支援を受けた臨時政府軍との「血の1週間」でパリ市民3万人が死に、その後の軍事裁判でも1万人が処刑。監獄は、こんどは革命を叫んだ側であふれかえった。
安保世代は「プロレタリアートによる自治」なんて呼んで<革命的都市自治>などと熱く議論したものです。
*1873=昭和6年 和歌山県堺に近い三重県での「血税一揆」が、美作=岡山などに広がった。
和歌山県堺に近い牟婁郡神内村(むろぐんこうのうち村=現・紀宝町)での「血税一揆」が、美作や伯耆=鳥取、讃岐=香川などでも立て続けに起きた。
前年11月に出された「徴兵告諭」の中に「西人(西洋人)之ヲ称シテ血税ト云フ、其生血ヲ以テ國ニ報スル」とあったのを<西洋人が人の生血を欲しがり政府を仲介して手に入れようとしている>と勘違いしたのがきっかけ。血税とはフランス語の直訳で「兵役で国に血(=命)を捧げること」を意味する。これが「生きたまま血を絞り取られる」という流言飛語となった。
もちろん地租改正による重税や徴兵制そのものへの不満、凶作などの背景もあったが、焼き打ちや打ちこわし、襲撃は600件にものぼり、学制や学校経費の負担への不満から小学校も50か所で壊された。
<血>といえば、から紹介した。いずれの国にもその歴史にはたくさんの血が流れているものということをあらためて思いますな。税金にしても。
*1912=大正3年 東京・帝国劇場で芸術座の『復活』が初日を迎えた。
トルストイの原作を島村抱月が脚色した。主人公のカチューシャを演じた松井須磨子が歌った劇中歌『カチューシャの唄』が人気を集め、若者たちが劇場の廊下に大書されて貼られた歌詞を写してその場で合唱がわき起こったと伝わる。
『カチューシャの唄』島村抱月・相馬御風作詞、中山晋平作曲
カチューシャかわいや
わかれのつらさ
せめて淡雪とけぬ間と
神に願いをララかけましょうか
カチューシャかわいや
わかれのつらさ
今宵ひと夜にふる雪の
明日は野山のララ道かくせ
「カチューシャ」はロシアに多いエカテリーナの愛称で、作曲を頼まれた中山は当時島村家に書生として寄宿していたが悩みに悩んだあげく<相の手>に「ララ」を入れることを思いついた。
劇は地方公演も含め4年間で440回以上すべてが大入り満員。翌年レコードになったこの歌は、数千枚で大ヒットいわれた当時としては画期的ともいえる2万枚以上を売り上げた。
このときの松井の髪型はというと「丸髷」で、写真に写る観客の女性の髪かざりいまのような「カチューシャ」ではなく学生は角帽姿が多かった。
髪かざりの「カチューシャ」のほうは2012年のセンバツ=選抜高校野球大会の入場行進曲はAKB48の『Everyday、カチューシャ』でした。
カチューシャ外しながら
君がふいに振り返って
第二次世界大戦でソ連軍(赤軍)が投入した初の自走式多連装ロケット砲が「カチューシャ」というのをご存じの方はよほどの兵器マニアだろうが、髪かざりの「カチューシャ」のほうはというと本邦だけの呼び名で起源は不明だそうな。